科学的介護とは何か ~事業運営とサービスの質の向上のために~
2022-09-12
はじめに
令和3年度介護報酬改定から約半年が経ちました。居宅介護支援事業所の皆さんの関心事としては、3年の経過措置が設けられている内容、とりわけ業務継続計画(BCP)の作成かと思います。
ただ、多岐に渡る内容を含んだ介護報酬改定でしたが、その中でも目玉と言えるのが、何と言っても「科学的介護」についてではないかと考えます。また、「科学的介護」については、今回の改定のみならず、次回令和6年度改定につながる大きな布石と言ってよいものです。
居宅介護支援事業所のケアマネジャーの皆さんにとっては、科学的介護関連の加算の取扱いについて直接的には関連がないので、あまりまだ実感がないかもしれませんが、科学的介護について、改めて要点をまとめ、事業運営と利用者へのサービスの質の向上に役立てるための視点を整理してみたいと思います。
ただ、多岐に渡る内容を含んだ介護報酬改定でしたが、その中でも目玉と言えるのが、何と言っても「科学的介護」についてではないかと考えます。また、「科学的介護」については、今回の改定のみならず、次回令和6年度改定につながる大きな布石と言ってよいものです。
居宅介護支援事業所のケアマネジャーの皆さんにとっては、科学的介護関連の加算の取扱いについて直接的には関連がないので、あまりまだ実感がないかもしれませんが、科学的介護について、改めて要点をまとめ、事業運営と利用者へのサービスの質の向上に役立てるための視点を整理してみたいと思います。
科学的介護に関する重要なキーワード
令和3年度介護報酬改定5つの視点の3つ目である「自立支援・重度化防止の取組の推進」については、冒頭に「制度の目的に沿って、質の評価やデータ活用を行いながら、科学的に効果が裏付けられた質の高いサービスの提供を推進」と書かれています。
重要なキーワードが散りばめられた文章ですが、分解してみると「制度の目的」「質の評価」「データ活用」「科学的」「効果」「質の高いサービス」といったあたりがキーワードになるでしょう。
一つずつ見ていくと、まず「制度の目的」ですが、これは「自立支援・重度化防止・尊厳の保持」ということができます。
そして「質の評価」ですが、これがなかなか一筋縄ではいかないものです。科学的裏付けに基づく介護に係る検討会取りまとめ(令和元年7月16 日)にも「介護分野においては、目指す方向性として、医療における「治療効果」など関係者に共通のコンセンサスが必ずしも存在するわけではなく、個々の利用者等の様々なニーズや価値判断が存在しうることに留意が必要」「科学的に妥当性のある指標等が確立していない場合もある」とあります。
そのためにも「データ活用」が求められてきたわけですが、「データ活用」の前に、まずは「データ収集」が必要だということで、皆さんもご承知のように、科学的介護関連の加算では、データの提出とフィードバック情報の活用が算定要件となっています。
また、各種データ等については、以下の言葉が重要なキーワードになってくるので、おさえておきましょう。
CHASE(Care Health Status Events)≒介護サービスにおける利用者の情報
VISIT(monitoring & eValuation for rehabIlitation ServIces forlong-Term care)≒リハビリテーションに関する情報
LIFE(Long-term care Information system For Evidence): 科学的介護情報システム
LIFE(Long-term care Information system For Evidence): 科学的介護情報システム
ICT(Information and Communication Technology):情報通信技術
AI(artificial intelligence):人工知能
PDCA:Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)
そして「科学的」についてですが、これは「再現性」がある、と言い換えてもよいでしょう。つまり、Aという状態の利用者にBというケアを実施するとCという状態になる、というイメージで、これまでは介護者がそれぞれの経験則に基づいて行っていたものを、標準化しようという試みです。介護者によって、サービスの質にばらつきが大きいという課題に対するもので、介護の専門性の向上(専門化)とも表現できると考えます。
ただし、介護という仕事は、創造的な仕事(≠画一的)であり、利用者一人一人異なる「個別ケア」を追求するものであることは忘れてはいけないでしょう。さらには、データには表現されにくい介護者の言葉遣いや表情・態度といった部分も基本中の基本として大切にされなければいけません。
このあたりは、ケアマネジメントにおいても同様の課題があり、質の向上に向けて努力する必要があるテーマと言えます。
そのうえで「効果」=「アウトカム」を明確にし、それを評価することが大切になりますが、現状ではデータが不足しているため、これからの3年間でデータを収集し、PDCAを回し、適切な評価指標を作る、ということになります。
AI(artificial intelligence):人工知能
PDCA:Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)
そして「科学的」についてですが、これは「再現性」がある、と言い換えてもよいでしょう。つまり、Aという状態の利用者にBというケアを実施するとCという状態になる、というイメージで、これまでは介護者がそれぞれの経験則に基づいて行っていたものを、標準化しようという試みです。介護者によって、サービスの質にばらつきが大きいという課題に対するもので、介護の専門性の向上(専門化)とも表現できると考えます。
ただし、介護という仕事は、創造的な仕事(≠画一的)であり、利用者一人一人異なる「個別ケア」を追求するものであることは忘れてはいけないでしょう。さらには、データには表現されにくい介護者の言葉遣いや表情・態度といった部分も基本中の基本として大切にされなければいけません。
このあたりは、ケアマネジメントにおいても同様の課題があり、質の向上に向けて努力する必要があるテーマと言えます。
そのうえで「効果」=「アウトカム」を明確にし、それを評価することが大切になりますが、現状ではデータが不足しているため、これからの3年間でデータを収集し、PDCAを回し、適切な評価指標を作る、ということになります。
どのようなデータを、どのようにして集めるか?
それでは、科学的介護においては、どのようなデータを集めようとしているのでしょうか。図表のVISIT、CHASEの項目(現LIFE)が中心になります。
ここで注目すべきポイントは、ADLの内容のみではない、ということです。認知症や口腔、栄養についての内容も多く含まれているということです。つまり、ADLを中心に考えられがちな自立支援ですが、令和3年度介護報酬改定でより強調されているのが、リハビリテーション・機能訓練と口腔・栄養を一体で考えようというものであり、そうでなければ効果が十分にあがらないということです。これは今後の改定の方向性でもあります。
利用者単位・事業所単位のPDCAが重要
また、科学的介護において強調されているのは、提出したデータについて厚生労働省からフィードバックを受けたら、利用者単位・事業所単位でPDCAを回して、質の改善につなげる、というものです。
加えて、科学的裏付けに基づく介護に係る検討会取りまとめにおいて「介護の場は、高齢者等の生活の場でもあることから、より、幸福感や人生の満足感等も含めた生活の視点を重視し、例えば、単なる身体的な能力の維持・向上だけでなく、何が生活の中でできるようになったか、ということや、食事の方法、排泄の方法、日中の過ごし方等の、本人の主体性を引き出すようなケアの提供方法等の重要性」が指摘されています。
つまり、利用者が要介護状態となっても、尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、廃用の悪循環を断ち切り、寝たきりとなることを防止する観点から、介護保険施設を対象に「自立支援促進加算」が新設されました。離床などの日々の過ごし方にも踏み込んだ、画期的な内容と言えます。
事業所の魅力アップのために
いかがでしょうか。改めて考えてみると、当たり前のことばかりかもしれませんが、なかなかできている事業所は少ないものです。ケアマネジャーにとっても、良質なサービスを行う事業所が増えることは歓迎すべきことでしょう。
リハビリテーション、機能訓練だけでなく、介護予防や認知症ケア、看取りの質の向上にもつながる取り組みだと思います。よって、サービス事業所の立場になれば差別化要因となり、稼働率アップにもつながる取り組みになり得ます。さらに、介護職の魅力の向上にもつながる可能性を秘めているため、人材確保上の差別化、職員の定着促進に活かすこともできそうです。
次回令和6年度改定ではアウトカム評価を含め本格導入と言われる科学的介護。そして、訪問系サービスや居宅介護支援にも導入が検討されています。各種データ、ICT、AIと、ケアマネジャーの働く環境は目まぐるしく変化していますが、良質なケアマネジメントを実施するためのツールとして活用していきたいものです。
まとめ
科学的介護に関する重要なキーワードは「制度の目的」「質の評価」「データ活用」「科学的」「効果」「質の高いサービス」
「制度の目的」は「自立支援・重度化防止・尊厳の保持」
「制度の目的」は「自立支援・重度化防止・尊厳の保持」
「質の評価」の為に「データ活用」が求められているが、その前にデータ収集が必要となる。データの提出とフィードバック情報の活用が科学的介護関連の加算の算定要件になっている。
「科学的」は「再現性」がある、と言い換えられる。
介護者によって、サービスの質にばらつきが大きいという課題に対するもので、介護の専門性の向上(専門化)とも表現できる。
ただし、介護という仕事は利用者一人一人異なる「個別ケア」を追求するものであることは忘れてはならない。
ケアマネジメントにおいても同様の課題があり、質の向上に向けて努力する必要があるテーマ。
「効果」=「アウトカム」を明確にし、それを評価することが大切になりますが、現状ではデータが不足している。これからの3年間でデータを収集し、PDCAを回し、適切な評価指標を作るということになる。
科学的介護においてのデータ収集はVISIT、CHASEの項目(現LIFE)が中心となる。
科学的介護において強調されているのは、提出したデータについて厚生労働省からフィードバックを受けたら、利用者単位・事業所単位でPDCAを回して、質の改善につなげるという点。
次回令和6年度改定では、アウトカム評価を含め本格導入と言われる科学的介護。各種データ、ICT、AIと、ケアマネジャーの働く環境は目まぐるしく変化しているが、良質なケアマネジメントを実施するためのツールとして活用していきたい。